いたガラス窓の外へ手を差し伸べる。はらり、と何かが掌
私は勢い窓を開ける。からら、と軽快な音を立てて開
ちらりと何か白いものが視界を横切った。
周囲だけが、存在感を持って点々と並んでいる。
の中、等間隔に並んだオレンジ色の街灯と照らされたその
やはり何も見えはしない。墨をぬったくったような暗黒
私はつ、と窓辺に寄って、暗い闇に沈んだ外を眺めた。
まあ、いい。そんなことは今どうでも良い。
霞がかった頭ではうまく判別付かなかった。
ことか、それとももっと前のことだったのか、ぼんやりと
ない。最後に布団に入ったのが昨晩のことか、おとといの
らしい。一体どれほど眠っていたのか、あまりよく分から
カーテンに遮られた窓の外は暗い。未だ夜は明けない
だなあと思う。
ば、私の吐く息も白く、冬というのはやはり寒いものなの
りするほどしんと冷えた空気が肌に触れた。よくよく見れ
を起こす。体温で心地良く温まった布団を出ると、びっく
窓の外に何か聞こえる気がして、私はむっくりと身体
真夜中、ふと目が覚めた。
「明日も貴女に会いたいと思ったなら、私も『こんにち
挙一動全てに目を奪われる。
さらりと流れた。大きな瞳の片方だけが瞑られる、その一
たウインクで返される。流麗な銀の長髪が傾げた首に従い
小さな悪戯が見つかった子供の様な、茶目っ気に溢れ
ているのよ。だから、こんにちは」
「あら、それは失礼。でもね、私にとってはそれで合っ
私には、そう感ぜられた。
むその姿は一切の穢れを寄せ付けない清廉さを有している。
には綺麗な女の人が立っていた。吐息も凍る冬の夜中に佇
少しだけ窓から身を乗り出して左を向く。するとそこ
「こんばんは、ではなくて?」
と確信を持てた。
澄んだ音がした。それは、私に向けられた声。不思議
「こんにちは」
《二〇一五年 七月十四日・三三三》
雪が降っていた。
雪だ。
の真ん中辺りに小さな水たまりができていた。
に落ち掛かる。素早く手を引っ込めて見てみると、私の掌
冬の華が咲いたかと錯覚するほどの笑みを、彼女は浮
「同意するわ」
彼女は少しばかり瞑目して、逡巡の後に口を開く。
友達になる上で必要ではないものだと。そう思わない?」
「いいえ、気付いているわ。でもそれは、私と貴女がお
ないのだけれど、私」
「あら、ありがとう。でもね、気付いてないのかもしれ
世に存在するんだって」
「いいえ、驚いたわ。だって、こんなに綺麗な人がこの
「貴女が初めて。私を見ても驚かなかったのは」
す。楽しげに、歌うように、にこにこと。
柔らかな笑みと共に、彼女は嬉しげに体を左右へ動か
「そうね、もしそうなったら、私も嬉しいわ」
くすくすと、手を口元に当てて彼女が笑う。
留めてもらえるのなら。
と思われるくらいで丁度良いのだ。少しでも貴女の記憶に
心の底から懇願する。でも、それでもいい。おかしな娘だ
気取った返事で大人ぶって、どうか私を見て下さいと、
言ってこれが精一杯の背伸びなのだと気付いてしまう。
は』と言える様に努めるべきなのかしら?」
って話」
「熱伝導率が良いとか悪いとか、そういう問題じゃない
「なに?」
隣でパンをかじっていた友人が言った。
「英国第71代首相に謝れ」
やすく醒めやすい、私は鉄の女なのである。
れたものだが、しかし元来の性向は変えようがない。熱し
その事に気が付いたときには我ながら根気の無さに呆
ときに携帯電話で確かめる程度のものになっていた。
週間が過ぎ、3週目に入ろうという頃には、気が向いた
ない。私はそれほど気の長い方ではない。降雪の無いまま
起きをして確かめる割には、私を喜ばす知らせは未だ入ら
ことは珍しいくらいの時期だ。毎日眠い目を擦りながら早
暦の上では冬ではあるが、例年通りであれば雪が降る
になった。
その晩以降、私は毎朝欠かさず天気予報を確かめるよう
《二〇一五年 七月十五日・あさつき》
友達になった。
こうして私は雪の降る夜にだけ逢える綺麗な人と、お
かべた。
かするだろう。
救急車を呼ぶか、煉瓦づくりの窓の無い建物へ押し込める
麗な女の人と友達になった』などと言い出したら、黄色い
ていた。私もこの友人が『夜中に起きたら窓の外にいた綺
無いのだが、確かに、考えてみれば突拍子もない事を言っ
してくれているらしい。これといって心配するような事は
私が話したこのまえの雪の夜の事を、彼女は殊更心配
かんないけど」
「怖くないわけ、その人? てかもはや人かどうかもわ
尋ねた。
個目のあんぱんの包装紙を解きながら、友人がふと
「ところで、さあ」
たペンネアラビアータにフォークを突き刺した。
違いだったらしい。納得して、私は目の前に山盛りになっ
べっぷりを見るに、どうやら釘が混入しているのは私の勘
ら、売店で買ったあんぱんを黙々とかじっている。その食
しを向けるだけだった。友人は時折牛乳で口を湿らせなが
友人は私の言葉には答えずに、ただ呆れたような眼差
れなら消費者センターに訴えた方がいいわよ」
「急に何言ってるの。パンに釘でも混入していた? そ
彼女の頬を伝った水滴が、グラスの水に落ちて小さな
「滅びるよ、私の世界は」
いた。
友人は水の入ったグラスを握りしめ、私を見据えて呟
「滅びる」
るのも寝覚めが悪い。
用にすくって舐める。行儀は悪いが出された料理を余らせ
私は皿に余ったトマトソースをフォークの尖端で不器
それで世界が滅びるわけではないものね」
だったとして、最悪とり憑かれたり、殺されたりしても、
「ま、大丈夫よ。もしあなたが心配しているようなもの
々過保護なところもあるのだけれども。
字がありありと見て取れた。優しい子なのだ、昔から。少
取りながら私の目をじっと見る。鳶色の瞳には不安の二文
友人はあんぱんから机に落ちた芥子粒を指先ですくい
感じはしなかったから」
悪いものじゃないとは思う。たとえば怨霊みたいな、厭な
「どうかな。なんであれ確証は無いのよね。でもたぶん
「ふうん……幽霊とか」
「べつに怖くはないわね」
だが。
ないというのであれば、この論理は破綻することになるの
くないと思うのが人情だろう。まあそれでも彼女が気にし
というか、仲の良い相手だからこそ不快な思いをして欲し
そういう問題でもないと思う。親しき仲にも礼儀あり
でしょう?」
「良いじゃない。今更そんなこと気にする間柄でもない
である。
れども、妙な生活感が伺えるというのも気恥ずかしいもの
流石に足の踏み場もない程散らかってはいないのだけ
れ、下着とかちゃんと片してあったっけな……。
友人の唐突な宣言に戸惑う。別に良いのだけれど、あ
「どうしたの? 急に」
「今日、泊まるから」
《二〇一五年 七月二十四日・三三三》
それしか言えなかった。
「そうかもしれない」
あまりに真剣そうな友人の表情に気圧される。
「そう」
波を立てた。
んな機会は幾度もあった。単なる『お泊まり会』に終始す
室に泊まりに来ることが嫌なわけではない。これまでにそ
朝の天気予報を思いだそうと躍起になっていた。友人が自
の後ろ姿を見ながら、私は見たかどうかも定かではない今
学生のように今晩のお泊まりセットを買い込んでいる友人
先ほどまでの悲愴そうな様子とは打って変わって、小
ーー雪は、本当に今夜降るのだろうか。
《二〇一五年 七月二十六日・あさつき》
「雪じゃない。予報では」
不安げに、彼女は吐露する。
「だって、今日は」
訪ねてみよう。ストレートに。
とである。
たばかりの彼女が何故このような言を発したのかというこ
しかしここで気になる事がある。先程一筋の涙を流し
合というのはそれほど多いものではなかったのだ。
れたというだけであり、冷静に考えると私にとっての不都
結局私は渋々了承することにした。突然だから躊躇わ
ことしないでよね」
「言っておくけれども、期待はずれでがっかり、なんて
「どうもしない、わけでもないけど」
させていることは明白だった。
女に触れることなど無い私の唐突な行いに、内心目を白黒
見比べる。振り払われこそしなかったが、普段自分から彼
友人はぎょっとした顔でつないだ手と私の顔を交互に
「えっ、なに、どうしたの」
宅への道すがら、隣を歩く友人の手に指を絡めた。
そう思うと私は途端に不安に胸を押しつぶされて、自
してみても、ほとんど狂人の妄言だった。
さえ思えてくる。友人に私が語ったひとつひとつを思い返
話を交わしたことも、実は私の妄想だったのではないかと
のだ。窓を挟んであちらとこちら、あの綺麗な人と短い会
にまた逢えるということも、もはや私の願掛けのようなも
またいついつにと日時を決めたわけではない。雪の夜
「ほんとうに逢えるかしら」
ある。
逢うことが出来る絶好の機会でもある。ただひとつ懸念が
が心待ちにしていた雪の晩だ。例の不思議な女の人にまた
しかし、友人の言によれば今晩は雪が降るらしい。私
るならば、私ももっと素直にはしゃいでいたかもしれない。
振り向いて一言、
部屋に足を踏み入れた私に気が付き、友人はこちらへ
身を露出し私の下着を穿こうとしている友人がいた。
するりと潜り込む。遅れて私が部屋に入ると、窓際で下半
私が玄関の鍵を開けると、友人はその隙間から猫のように
私たちは目的地である私の自宅までたどり着いていた。
私たちがなんの益体も無い会話を繰り広げている間に、
「ほら着いたよーおじゃましまーす」
「ちょっと」
「可愛い可愛い」
「なによ、じゃあ私が可愛くないっていうの」
「すごい自信」
「何言ってるの、私はいつでも可愛いわよ」
愛いのに」
「はいはい。いつもそうやってしおらしくしていれば可
「私だって人間ですもの、そういうときだってあるわよ」
けれど。
だろうか。自分では結構ポーカーフェイスのつもりなのだ
見透かされていたらしい。そんなに顔に出やすかった
「ふうん……珍しいね。そんなに不安がるなんて」
みたくって」
それはー……そのー……チサトの穿いたぱんつを穿いて
「あああああああ待って待って分かった話す話します!
「通報」
「え……それは……」
「なんで下半身露出して私の下着を穿こうとしていたの」
たのかな可愛いなって思って!」
て近付いたら、見たことないぱんつがあったからいつ買っ
洗濯物が干してあって、不用心だな取り込んどこうと思っ
「いやこれは違うんだって! 部屋に入ったら目の前に
ける。
した。私は通話ボタンに指をかけたまま彼女の手を避け続
めたままこちらへ駆け寄り私の手から携帯電話を奪おうと
私の指の動きを読んだのか、友人は私の下着を握りし
「だあああああ待って待ってごめん、ごめんって!」
り出し、一一〇番へ緊急通報しそうになる。
見事なまでに不審者である。私は思わず携帯電話を取
「…………」
と言った。
「ぱんつ」
の洋菓子屋で有名なお店なのだ。ちょっと高いけど、味は
機械みたいだ。それもそうか。御堂屋はこの辺りでは老舗
ぴたり、とヒトミの動きが止まる。スイッチの切れた
「あーあ。御堂屋のケーキ。二つあったんだけどなぁ」
ても遅いのだけれど。いっそ追い出してやろうか、こいつ。
やっぱり家に上げるんじゃなかった。いまさら後悔し
だから私のブラを被るのをやめなさい」
「いやいや、そんなこと言われても騙されないからね?
「チサトは可愛いんだよ……純真無垢なんだよ……」
いたけれどね?
意味不明の供述が返ってくる。いや、正直予想はして
「チサトに汚いところなんてないんだよ!」
く分からないんだけど。何な訳? 汚いとか思わないの?」
「そもそもさ、人の穿いたパンツを穿きたいって心理がよ
《二〇一五年 八月三日・三三三》
そう呟いて私はひとまず携帯電話を机に置いた。
…」
「なんにせよ不審者であることに変わりはないようね…
にそこまでする価値が果たしてあるのだろうか。
下半身丸出しで何を言っているのだこの女。私の下着
「もぐもぐしたら許さないからね?」
ヒトミが名残惜しそうな目で私のぱんつを見ている。
んだよその状況。わかるけれども、わかってたまるか。
と和解した時に似た感情が胸中に溢れ出る。いやいや、な
ヨカッタ。なんだか未開の地で出会った不思議な部族
「……ワカッタ」
悩みすぎて獣みたいになってるよ。
「ぐ……ぐぐぐ……グルル」
ケーキを犠牲に被害を抑える。我ながらクールな作戦だ。
るりと頭の上からすべり落ちるブラを支えようとはしない。
脅しには屈しないぞ……という姿勢を見せつつも、す
も?」
訳。私一人で食べてしまっても一向に構わないのだけれど
「昨日たまたまママが来たんだよね。その時の残りって
で御座いましょうか? だって。
らヒトミがこちらを向く。目で訴えてきた。どういう意味
ギ、ギ、と音まで聞こえてくる程のつっかえをしなが
っちぐらいのギャップがある。そのぐらい凄いのだ。
いやいや一線どころじゃないね。ホームのあっちとこ
絶品。コンビニスーパーとは一線を画している。
とに交互に視線をやりながら、状況を上手く飲み込めずに
私は足下で死んでいるヒトミと、ヒトミの声がする扉
扉の向こうからはヒトミの声がする。
「あっ、な、なんでもないわ!」
「どしたん?」
トミの死体だった。
それは、私の足下に横たわっていたその障害物は、ヒ
私がつまづいた『何か』。
ひきつった叫びが私の口から出る。
「ひっ」
た。
ないと強がって、ふと、何気なく声のした方へと目を向け
居間の方からヒトミが心配して声をかける。なんとも
「だいじょぶ?」
出るくらいに痛かった。
とだけは回避したが、思い切り打った膝が、思わず笑いが
んでしまった。咄嗟に両手を突き出して顔面をぶつけるこ
居間を出たところで、私はなにかにつまづいて前方に転
《二〇一五年 八月九日・あさつき》
そう言って冷蔵庫からケーキを取り出しに部屋をでた。
「はい、ケーキお待た、せ……」
て冷蔵庫に保管してあった御堂屋のケーキ箱を取り出した。
るらしい。私は気を取り直して立ち上がり、膝を手で払っ
まったく、ヒトミはどう転んでも私に迷惑をかけてくれ
で神経が昂ぶって、それで妙な白昼夢を見てしまったのだ。
ったのだろう。あの子があんな馬鹿な事をするから、私ま
やはり私の見間違いだったのだろうか。きっとそうだ
ーー消えた?
そろそろと瞼を開く。
自然と涙が出るほど強く目を閉じることきっかり十秒。
ていれば良いと願いながら。
そこにある光景が、次に目を開いたときに消えてくれ
私は強く目を瞑る。
本当にいるとしても、その人間はきっと正気ではない。
て存在するものだろうか。いるのかもしれない。しかし、
こんな唐突な状況を、上手く飲み込める人間が果たし
なんだこれは。
なんだこれは。
なんだこれは。
いた。
何故私は、自分自身と友人とがさも恋人同士であるか
つだった。
ごくごく控えめに表現して、こっぱずかしいというや
私』の差し出したケーキを口にしている。
頬を赤らめ、躊躇うような素振りを見せながらも素直に『
べさせなどしていた。ヒトミはヒトミで、はにかむように
手元のケーキの端をフォークで分け、ヒトミにそのまま食
『私』と仲好く歓談を続けている。時折『私』は、自らの
少々声を荒げても、ヒトミは耳に届いた様子もなく、
「ねえ、ちょっと……ヒトミ!」
当然の如く、反応は無い。
私は誰へともなく呼びかける。
「ちょ、ちょっと……」
違えようがない。
ョコ・プレートの角度まで、何もかもが同じなのだ。見間
類は勿論、先程少し確認した際ちょっと傾いてしまったチ
持った箱の中に収まっているものに違いない。ケーキの種
キを幸せそうに頬張っていた。あのケーキは今私が右手に
より正確に言えば、私とヒトミが座って御堂屋のケー
私がいた。
「あ……ああ……」
自らの唇を重ねたのだった。
私の制止などきかず、ヒトミはそのまま『私』の唇に、
「へっ、あ、ちょっ! 待ちなさい!」
は『私』の後頭部に手を回して逃がさない。
逃げ出そうとしていた。しかし、いつになく強気なヒトミ
めるようにヒトミの手を払い除け、身をよじって彼女から
歯の浮くような口説き文句だったに違いない。『私』は窘
き取ることが出来なかったが、『私』の反応を見る限り、
は『私』の頬に手を添え、何事か囁いた。上手く私には聞
ただ談笑していた『私』たちだったが、やがてヒトミ
えてきた脇腹の肉の感触を楽しんでいた。後で殴ろう。
どは、『私』の腰にさり気無く手を回し、最近ちょっと増
の間にかベッドにぴったり並んで腰かけている。ヒトミな
縮まっていた。机を挟んで対面に座っていた二人は、いつ
そうこうする間に、『私』達は次第に物理的な距離が
か。
同士の恋愛を貶めるような真似でもしたのというのだろう
を見せ付けられなければならないのだ。前世で何か、少女
のように仲睦まじくケーキの食べさせっこをしている光景
んにちは』と言ったのだ。
前はそう、彼女と出会った深夜、彼女ははっきり『こ
「ねえ、今晩は、でいいのかな?」
今は何時だったか。さっきまでは夕方だったけれども。
とっさに挨拶をしたものの違和感を覚える。
「こ……こんばんは……」
《二〇一五年 八月二十二日・三三三三三》
振り返るとそこに、雪の日の友人が立っていた。
「今晩は、お久しぶりね」
それは私が待ち望んでいたもの。渇望していた存在。
違えようも無い。
私の背後から聞こえた声。
りん、と鈴が鳴ったような気がした。
「楽しんでもらえているかしら」
わず吼えた。
あまりに自身の理解を超えた出来事の連続に、私は思
「もう、なんなのよこれは!」
の上に折り重なるようにして倒れ込んでいた。
ょどと目を彷徨わせている間に、ヒトミと『私』はベッド
どこに視線を向ければ良いやらわからない。きょどき
言葉に対して実感が伴わないせいだ。
そう彼女は呟くけれども、何のことだか理解できない。
こに私は割り込めない」
はないわ。ここは貴女が眠る時に来る場所ではないの。そ
「貴女の夢。でも勘違いしないで。貴女は寝ている訳で
夢?
「ここは夢」
てかぶりを振る。
待たせてごめんね、と彼女は続けた。私はそれに対し
こっちで会うことにしたの」
「今日はちょっと表に出てこれなさそうだったから、ね。
そりゃあもちろん。
「気になる?」
こうでは組んずほぐれつな展開になっているのだけれども。
そんなことより今の状況は一体なんなんだろうか。向
正転というよりは反転、というのだろうか。
でもそれは正確ではなかったらしい。
私はあの時、彼女の反応を見て逆転していると感じた。
ということはどういうことなのだろうか。
「今の時間は私にとってそうなるわね」
《二〇一五年 九月六日・あさつき》
夢よ」
「ここは、貴女の願望が顕れた世界。そう言う意味での、
written by 三三三&あさつき
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